神辺遺産の認定

第2回 神辺遺産の認定(2024.9.27)

6月10日、第2回神辺遺産選定委員会を開催し、推薦のあった4物件と新たに1件を追加した計5件を選定し調査委員会に諮問(調査依頼)した。9月23日、調査委員会の審議結果の報告を受け、9月27日、「神辺遺産認定委員会」は、第2回神辺遺産として4件を認定した。
認定No4 廉塾バラ(生態系・植物)
認定No5 高屋川の夕日(自然・景観)
認定No6 胡神社(十日市・三日市・七日市)
認定No7 紅屋食堂(食文化・歴史的建築物)
選定案件の荒神社については、地域に多く存在しており、資料不足・調査不足で「暫定候補」として次回選定委員会で再審議となった。
認定式は、11月16日(土)開催の第7回地域遺産フォーラムの中で行う。

認定4 廉塾バラ
  国特別史跡「廉塾ならびに菅茶山旧宅」の中門前で、庚
  申バラの一種が「発見」 された。古文書などから、菅
  茶山が見たバラとも考えられる。地域住民はこれを「廉
  塾バラ」と名付け、2024年6月には「廉塾バラを愛する
  会」を結成して継承体制を整えた。各地で接ぎ木や挿木
  の講座が頻繁に開催され、旧街道沿いや小学校、駅前な
  ど地域各所に植栽されている。廉塾バラを通じて、地域
  住民が地域を思い自ら動く機運も醸成されつつある。  

認定5 高屋川の夕日
  領家橋付近で、鉄道(鉄橋)と高屋川に夕日が溶け込む
  風景は、多くの画家や写真家らの心をとらえる。市指定
  天然記念物である「早田荒神社のムクノキ」を背景に、
  神辺の原風景の1つとして人々の記憶を喚起する。葛原
  しげる作詞の名歌「夕日」は、生家(現在の神辺町八尋
  )あたりの風景とされるが、これを思い起こさずにはい
  られない。現実と心像が混沌として、1つの「神辺」を
  物語る風景であり、認定物件に相応しい。なお、神辺遺
  産制度で重要な継承主体を明確にすることはできないた
  め、ここで、神辺遺産の趣旨に概ね同意する人として、
  「神辺人(かんなべびと)」を提唱し、これを継承主体
  として設定した。  

認定6 胡神社(十日市・三日市・七日市)
  胡(恵比寿、戎など)信仰は日本全国各地にあり、様
  々に祭事が執り行われる。経緯は伝承のみで不明なこ
  とが多いが、商売繁盛をはじめ、地域安全、家内安全
  などを願い、広く地域住民に親しまれている。旧西国
  街道神辺宿では江戸期の三市にそれぞれ祠が残り、年
  に一度の例祭が行われる。各祠は江戸期から続くと考
  えられね修理を重ねたり、移設されたりしているが、
  三者三様の組織をもち、それぞれの形と思いで今に継
  承している。同じ民間信仰である荒神社と結びついて
  維持されている。旧街道沿いの商店は少なくなったが、
  現代生活に沿う形で3つが揃って継承されている。

認定7 紅屋食堂
  旧街道沿いで唯一昭和中期から一般向けに営業を続け
  る大衆食堂で、大正期の2階建ての蔵を改築したもの
  である。なまこ壁と白漆喰の建築は神辺宿の典型であ
  る一方、正面の窓配置は独特である。1953(昭和28)
  年に現当主の先代が屋号(由来不明)と店舗を引き継
  いだ。「中華そば」や持ち帰りもできる「関東煮」が
  が名物であり、現在二代目当主(1953年~)と三代
  目(2000年~)が昼夜営業を続けている。地域にお
  ける古建築の存在可能性を示すとともに、地域の食文
  化を今に伝える貴重な物件である。年代を問わず地域
  の人々の胃袋を掴み続けている。